モデラーGP2013
EX Class
Entry No.2

Yoshidaさん
197A5 YMAHA TY125


シンプルなトライアラー、私の大好きなジャンルです。
10数年前にノーマル仕様で作った事が有りますが、今回は純競技仕様で作ろうと思います。

メッキ部品は全てメッキを落としてから作業に入るのがいつものやり方、今回も全ての部品を漂白剤とシンナーを使って落とそうとしました。
クロームメッキには下地にもう一層メッキ下地が処理されているので、シンナーに漬け込んで剥離させようとしたら、シンナーを間違えたらしく全部溶けてしまいお釈迦様になってしまいました。
これではお手上げ、早速リタイヤ・・・そうも思いましたが滅多に手に入らないキットをそうやすやすと諦めるわけにも行かないので、失った部品はスクラッチする事に決めて気を取り直して出直す事にしました。

使えなくなった部品はホイールリムとブレーキドラム前後、インナーチューブ、リヤショックユニット、ハンドルバー、キックアームその他数点。 最初に取り掛かったのは前後のホイールリム、これが上手く出来なければ本当に諦め、実はリムをゼロから作ろうとするのは初めてなんです。 工作を始める前に色々な部品を採寸してメモっていたので、その数値を頼りに進めます。
リム形状はキット部品より実物を参考にします。
先ずはプラ板の積層で大まかに貼り合わせました。

貼り合わせが隙間無くシッカリ固まったところでカッターで削り込み、前後のリムの形が出来上がりました。

リムはキット部品よりも丈夫に綺麗に出来上がった事で、この先に意欲が出てきました。
次は前後のブレーキドラムです。
キット部品では冷却フィンが省略されてノッペラボウのブレーキドラムですが、どうせスクラッチするなら忠実に再現した方が良いとしてプラ板の積層で表情を付けています。

スポークやチューブ止め、エアバルブの通る穴を開け、ホイールを形勢する部品が完成しました。

TY125はアルミリムが装着されているのでドラムと共にアルミ風の塗装をしました。
これでとりあえずホイールの再生が終わりました。

次に取り掛かったのはフロントフォーク。
インナーチューブはメロメロに溶け、ただでさえスプリング内蔵で収縮出来る作りなのでボトムケースの中にはいる部分は細くなっているのでどうにもなりません。
代わりになる材料を色々集めまくってストックしている伸縮アンテナの中から見つけました。
ピッタリサイズの太さが見つけられるのは収集の多さ所以ですね。
少し加工が必要ですが大した障害も無く組み付ける事が出来そうです。

インナーチューブの代用が見つかったので、ここでボトムケースのホイールシャフト穴を改造します。キット部品ではハブ側にシャフトがくっついていて、ボトムケースで両側から挟んで組む方法です。工作やモールドの正確さから、シャフトは独立した部品として作り、実車と同じ組み立て方法が取れる様にしました。

フロントフォーク関連でフェンダーの改造をします。何の変哲も無いフェンダーなので少しでもワイルド感を出したいのと、剛性アップのスタビライザーを兼ねたフェンダーステーを作っています。フェンダーの取り付け穴を探るためにキット部品をゲージに見立てて真鍮パイプと真鍮板を使って工作中。

取り付け穴が確定したらフェンダーステーをフェンダーに取り付ける穴も確定させ、アルミ板で作ったクランプで取り付けられる様に工作。
フェンダーの形も大幅に変更、削ったり足したりして最終的な形はこんな具合です。

フェンダーに目処が付いたので、失った部品のスクラッチを続けます。 リヤショックもこんな感じに溶けてしまい、完全にアウト。 材料を探しましたがプラ材で手持ちが有りません。 アルミパイプなら有るので何とかならないか試作しています。

何とかなりそうな気がするので本格的に作り始めました。 使っている材料はプラ板やプラ棒、アルミパイプにビニールコートされた針金です。

COSMO'S FACTORY 製のエッチングチェーンを作ります。
エッチングシートには駒と2枚合わせのローラーになる輪状のパーツが有りますが、いつも駒だけを使いローラーはスプロケットの厚さに応じてアルミパイプや真鍮パイプをカットして造るので必要有りません。 切り落とした駒の半数を黒染め液に浸して真っ黒にしました。黒くした駒は内側に使います。

チェーンは一齣一齣慎重に組んで、ネジレや横方向の遊びを極力無くす工夫をした結果、今まで何本も作ってきた中でネジレも遊びも殆んど無い一番出来の良い物となりました。 前後のスプロケットは厚さ0.7mmのアルミ板から切り出して作っています。 チェーンが少し長く繋がって来たら、切り出したスプロケットをチェーンに合わせて微調整のヤスリ掛けでスプロケットの全周に噛み合う事ができました。 ドライブスプロケットも同様に工作したので、最終的に組み上がれば車体をどんなに引き回しても壊れる事は有りません。

チェーンの長さが確定出来たのでこの段階で繋いでしまいます。 上がキットの部品、下が今回作った部品で、広角で撮ったので幾分大きく見えますが全く同じ大きさに仕上げました。

チェーンが出来たので、エンジンに着手しています。 クランクケースやシリンダーフィン、ヘッド、両サイドカバーなど構成部品はそう多くは無いですが、合いは良く有りません。 クランクケースは左右貼り合わせですが、段差が出来たりヒケが多かったりで修正には結構手こずります。
フィンは積層部品ですが誤った部分も有るので、これも要修正。
ヘッドはこの様に間が埋まっているので堀込まなければならないのですが、ここの部分の裏側がえぐれているのでパテを充填してからの作業です。

全体にボッテリしているキット部品を削り込んでシャキッとさせています。 排気ポートは別部品で、仮組みではこんな向きに取り付きますが、全く出鱈目で本当は正面に向かって少し下向きになるので直さないとエキパイが取り付きません。

クランクケースの両側カバーのビスモールドは曖昧な形なので、ビスの頭を落としアルミパイプで代用しています。 その他余計な穴を埋めたり荒れている面を整形したりと結構手間を要します。

大まかにエンジンが出来たのでフレームに搭載するためのブラケットをエンジン側に付けています。 フレーム側に最初に付けてしまうと搭載出来ないのですが、この辺の説明は一切なされていません。 キットのモールドも大雑把ですが、説明書も極めて大雑把、かなり先の段階まで仮組みは欠かせません。 クラッチのレリーズレバーも部品として無いので作らなければなりません。

スイングアームもフロントフォーク同様シャフトを両側から挟む方式なので、完成した後バコバコしてぐら付きますからホイールシャフトを貫通させて隙間が出来ない工作をします。 チェーン引きとロックピンはアルミ板、アルミ棒で作っています。 そのほかサイドスタンドも設定は固定ですが補強して可動出来る工作をしています。

リヤホイールにスプロケットを取り付けました。 取り付けボルト、ロックプレートはプラ棒とプラ板で作っています。 これでフレームにエンジンが搭載されればチェーンの仮組みが出来る様になりました。

失った部品にスイングアームに付くチェーンテンショナーが有りました。 極めてアバウトな形でチェーンを横から押さえる様な形だったので正確な形に作っています。 ただ、実際はスプリングでチェーンを下側から押さえ絶えず張っている状態に保つのですが、模型では強度的に???なので、潔くこの部分は固定することにしました。

取り付けるとこんな感じ、まだスプロケットの位置が確定していないので弛みが大きいですが、自然な弛みが表現できると思います。

シリンダーフィンにクラッチのケーブル止めを作り、パイピングの準備を済ませてフレームに搭載。 シートレール後部のフェンダー取り付け箇所からR部分までをカット、軽量化しています。

スイングアームを含むリヤホイールが完成、キット本来の取り付けはフレームでピボットのピンモールドを挟む様になっていましたが、改造してフレームを完成させてからでも取り付けられるようにしています。 これで車体後部が組み立てられるようになりました。

リヤホイール関係を取り付けました。 マフラーは後部に付くはずのサイレンサーをキャンセルして、チャンバーのみとし、リヤショックスプリングの後ろ付近までパイプを伸ばし、横方向に排気口を向けています。 この段階まで来てやっとチェーンの調整が出来るようになりました。

フロント回りを組み立てました。 スクラッチしたフェンダーステーの位置が気掛かりで何度か仮組みと調整を繰り返して正規の位置を決めてからホイールを取り付けています。

キット部品のモールドを落とし、シャフトを貫通式にしてディティールアップ。 シャフトの片側はキャッスルナットに割りピン、もう片方はシャフトをボトムケースエンドでボルト締めです。 トルクプレートにはエッチング部品のランナー部分で作りました。 ここまで組み立てるとぐら付きも無くネジレやシナリにも格段に強くなっています。

フロントフォークを取り付ける前に小物を作っておきます。 溶けてしまったキックアームと真鍮棒を素材に製作中のキックアーム。 真鍮棒にハンダを盛って削って形を出しています。

クランクケースに有るキックシャフトに取り付く部分、キット部品は一体成型で向き固定。 どうせならとこの部分を可動させる工作をしています。 材料はハンダをいったん溶かして玉の状態にした物からの削り出し。 心棒を植え込んでアームを差込んでいます。 ストッパーを設けているのでキッチリ90度開きます。

昔、トライアル遊びをしていた頃、タンクとシートが一体になったスマートなタンクシートが欲しくて仕方が有りませんでした。 このTY125もそんなタンクを付けたらイメージ一新するに違いないと思いスクラッチしています。 ベースはノーマルタンクの内側の部品。 それをフレームに仮組みして、後はペーパークラフトの真似事で形を模索しています。

おおよその形が出来たらベースから紙を剥がし、ベースにプラ板をどんどん貼り付けていきます。 タンク部分には削り過ぎない様にガイドとなるプラ板を仕込んでパテを持っています。

シート後部の広がった部分をフレームに沿う様にすぼめたり、ウエスト部分を細めたりと試行錯誤をしながら形を作っています。 右側サイドの段付きはマフラープロテクターを兼ねているので、マフラーの出っ張りに合わせて作っています。 そういう事でこの部分は左右非対称になります。

溶けてしまったハンドルバー、プラ棒を蝋燭の炎で炙りながら曲げ加工をしました、冶具無しで左右同じ向き角度に作るのは難しいです。 右グリップに有る筈のスロットル巻上げ機構が無いので要スクラッチ、また、左グリップに有るスイッチボックスは不要なので削除します。

ハンドルバーの固定は実車ならばボルトでシッカリ締め付けられるのですが、模型ではそうは行きません。 トップブリッジの接着部分の面積は非常に小さいので、チョット倒したりするとハンドルが外れたりする可能性が大。 そこで狭い部分ですがハンドルバーに穴を開けてアンカーを仕込み、トップブリッジに差し込んで接着する方法を取りました。 

ハンドル周りの取り付けが終わりました。 スイッチ類と電装配線が無いハンドル周りは、何だか自転車のそれを思わせます。

小物の仕上げをしています。 クラッチケーブルはケーブル止めに通し、プラ板で作ったロックナットで止めスプリングをくぐってレリーズレバーに繋いでいます。

プラグとコード。 キット部品は黒い方でビニールの様な材質の一体成型物、非常に見た目が良く有りません。 プラ棒を使ってプラグとキャップを作り、プラグの方はガイシとネジ部分の色分けをします。 完成後は結構見える所ですから。

キックアームを取り付け、ステップやペダル部分の塞がった部分をくり抜き、滑り止めの彫刻をしています。 リヤブレーキロッドはステンバネ線を使いました。

レーシングタンクの塗装です。 タンク形状が変わったのでキットのデカールが使えなくなりYAMAHAのロゴだけを切り取って使いました。 TY125のグラフィックは2種、レッドまたは濃いブルーのストロボラインですが、このモデルはオリジナルと言うことでグラフィックもオリジナルです。 ストロボラインを使わず、ツートーンの色分けで白/黄色としています。 最初色分けだけで済まそうとしましたが、薄いカラーなので締りが無いのでブラックのピンストライプを書き入れています。

大きすぎるキット部品に換えて小型のコックとキャップを作って取り付けました。 トライアルバイクの乗車姿勢は基本的にスタンディング、シートに腰を下ろす事は殆んど有りません。 スタート待ちで休んでいる時に腰を下ろすくらいで、お飾りの様な物ですが無いのも変です。 モデルでは必要最小限の大きさで、厚めのプラ板をベースに馴染ませて作っています。

完成しました。
当初サクッと作る予定がとんだアクシデントに見舞われ、セミスクラッチせざるを得ませんでした。 それでも頑張って完成出来た事は今後の励みにもなり、自信にもつながりました。 昔自分の憧れだったスタイルに作れた事が何より幸せです。 完成写真を次に載せておきます。

当初の目的の中にドライブチェーンの自然な弛みを表現しよという試みが有りました。 コスモズファクトリー製のエッチングチェーンがこの目的に応えてくれました。

セクションをクリアーするためにメインスイッチも含め余分な装備を一切省いた潔いスタイル、叶うならばもう一度こんなバイクで遊んでみたい。

TYのオリジナルスタイルと比べるとだいぶスタイリッシュになったと思います。

ヘッドライトの代わりにゼッケンプレートをプラ板で作って付けてみました。

光物も含め全て塗装と筆書き、金属感が感じられるでしょうか。

ライダーがバランスを取り易くするため、極力細身に作られているタンクとシート。

自作のチェーンとスプロケットの出来は今まで最高の出来具合、今後の糧となりました。

スクラッチしたハンドルや其の他のフロント部分、キット部品よりも丈夫に出来上がりました。

サイレンサーを敢えてオミットし、軽快感を演出したつもり。 ツーサイクルチャンバーから吐き出される排気音はパンパンと乾いた高音が聞こえてきそうです。

古さを感じさせるフロントドラムブレーキ、効きが甘いのでジャンプした先でピタッと止まる事が僕にはなかなか出来なかった。

 

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